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2008年3月

[裁判]住基ネット合憲判断の理由がよく分からない

 少し古い話で恐縮ですが、住基ネットの合憲性について争われていた事案について、最高裁判所が合憲の判断を下しました。

● 最高裁判所の判決文(PDF)
 http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20080306142412.pdf

 結論について賛成か反対かはここでは触れません。その点についてはご想像にお任せします。

 気になったのは、合憲と判断した理由です。

 判決理由として裁判所が示している点を要約すると

  1. 「氏名」「住所」「生年月日」「性別」「異動履歴(転居等)」は秘匿性の高い情報とはいえない
  2. システム上の欠陥等による漏洩の具体的な危険性はない
  3. 漏洩等については懲戒処分又は刑罰をもって禁止されている

以上によって、住基ネットは安全なものだと判じています。

 へー。というのが正直な感想です。

 まず第1点。「氏名」「住所」「生年月日」「性別」「異動履歴」が保護に値しない個人情報だという点について。個人情報保護法における個人情報の定義は

「氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの」

となっていますが、その中で「氏名、住所、生年月日、性別、異動履歴」は保護に値しないって、ほーほー、個人情報保護に頭を悩ませている事業者の皆さん、朗報ですね。

 しかし、例えば藤原紀香の現住所が一般に知られてしまったとしたら、彼女の生活は著しく支障が起きるのではないでしょうか(この点、僕自身、芸能人に疎いので、例がぴんと来ない方はお好きな有名人に置き換えてください)。

 また、有名人だけでなく一般人にしても、「氏名、住所、生年月日、性別」情報は保護されたい情報なのではないかと思います。

 例えば、DM事業者にとって、住所、氏名に加えて生年月日や性別が分かるリストをもっていることは大きなメリットです。考えてもみてください。1980年生まれ、女性。同じ住所での異性登録なし。つまり独身。そろそろ結婚を考えていてもおかしくない。結婚相談案内のDMを打つわけです。あるいは、2002年生まれの山田花子さん。同じ住所に1940年生まれの男性がいる。そろそろ小学校にあがる孫がいるおじいちゃん。ランドセルの一つも買ってやろうと思っているなじゃないだろうか。等々。いろいろと思いつくわけです。ましてや、悪意のある人、つまり架空請求を行っているような人々にとってはよだれが出るような情報です。

 これを「保護するに値しない」というのは、僕の感覚からはずれています。

 第2の点については、いわずもながです。基本的に文系の裁判官が「システム的に危険性がない」なんて、本当ですか? そんなふうに断定して、もし漏れた場合、この裁判に立ち会った人(ちなみに裁判長は涌井紀夫)は、どのような責任を負ってくれるのでしょうか? と言いますか、システムに「絶対はない」というのが鉄則だと思うのですが、いかがなものでしょうか。

 しかも、システム的に問題ないとしても、人的な問題があります。厚生省職員が、職務とは関係なく興味本位で有名人の年金記録を閲覧していたというのが問題になっていたはずです。ましてや、住基ネットを使える公務員の数は、厚生省職員の比ではありません。彼らのモラルを信頼しろと?

 第3の点については、正直あきれています。漏れた場合は罰する。だから問題ない。いやいやいや、住基ネットは住民の個人情報が電子情報にされていることが売りなわけでしょう? そして、電子化された情報は、いったん漏れた場合、もはや止めようがないというのは、Winny の漏洩事件を挙げるまでもなく、様々な人が、様々な機会に指摘していることでしょう。つまり、漏れてからでは遅いわけです。

 さらに言えば、社保庁の年金着服について横領罪として訴追されていない例に見られるように、なにか問題があったときに、役所というのは責任の所在をうやむやにする傾向にあることが、まさに問われている今日、最高裁判所はなにを見ているのか?

 住基ネットが合憲だとする判断については、とやかく言いません。でもね、その理由として上記で足りると思っている最高裁判所の考えが、僕にはよく分かりません。とりあえず、涌井という裁判長の名前は覚えておきます。

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[マスコミ] テレビ番組とネットの融合

 ニコニコ動画を運営しているニワンゴの母体ドワンゴが、各放送局に対して「番組は削除しますよ」との通知を行いました(PDF)。

 それとは直接関係ないのですが……。

 今日は完全に暴論です。

 テレビ局がネットと融合するための最も手っ取り早い方法として個人的な提案として

番組内で常時CMを流す

のはいかがかと考えています。

 民放各局の最大の収入源は依然として広告収入です。このビジネスモデルを民放各局が抜本的に変えられない事情があるとすれば、CM を現在の60分間で約10分強だけとするのではなく、60分間フルフル使ってしまうという案です。つまり、スポーツ中継などでたまに行われているような、番組を放映している下部等の一部スペースで CM を放映する方法です。

 これによって、

  1. 単純に広告枠が増える→収入源の拡大につながる
  2. ネットで流用されたとしても、広告収入源であるCMも表示され、かえって広告枠の価値が高まる

以上のメリットがあるのではないかと考えています。

 繰り返しますが、テレビ局にとって最大の収入源が広告収入であり、かつ、視聴率=ネット・ビジネスで言うところのPVであるというのが現状であり、当面の将来も継続すると言うのであれば、「番組中常時CMを放送する」という案は上記に述べた2点より収入の増加につながるのではないかと思います。

 この案の最大のネックである視聴者の支持について言えば、現在、テレビのインチ競争は拡大の方向にあります。これまでなら確かに小スペースで CM を流しても見えないといった状況なのでしょうが、20インチオーバーで争っている現在のテレビのハードウェアとしての状況を考えれば、かなりの部分クリアになるのではないでしょうか。今時分14インチ以下のテレビで見ているような層は、そもそも購買力がないわけで、思い切って切り捨ててしまってもいいのではないでしょうか(ちなみに、僕自身は14インチのテレビを今も使っています)。

 以上は本当に乱暴な案だと僕自身思います。ただ。

 テレビ局としては上記の案ですべて解決するのではないかと思ってしまう背景として、そもそも著作権を盾に主張しているテレビ局の姿勢が、僕に二律背反な状況に陥っているのではないかと思えるからです。

 テレビ局が自社が放映したものをネットで公開されることに対してクレームを入れる根拠として著作権法上の権利を侵害しているというものがあります。法文上は確かにおっしゃるとおりです。

 しかし。

 著作権法は本来著作権者の権利を保護すること以前に、本質的な意味での創作者(クリエイター)の権利を保護することを目的にしていると僕は考えています。

 例えば小説であれば作家が著作権者であり、音楽であれば作詞者、作曲者、演奏者(歌手も含む)であるといった感じです。

 映画やテレビ番組の場合、この著作関係が複雑になるのは、脚本担当、撮影担当、音声担当、出演者等々多くの人が関わることにあります。著作権法上は、このような状態を想定して共同著作という考え方を想定しています。

 その上でなのですが、歌手やお笑い芸人が自身の出演したシーンを自分のブログで動画として紹介しすることに対してもテレビ局としてクレームを入れていることを見ると、テレビ局的には、本質的な意味でクリエイターの権利を守りたいのではなく、テレビ局自身の利益を守りたいだけなのではと邪推してしまうわけです。

 であるとするならば、「CMを番組本体でも流す」ことによって、テレビ局的な権利は守られていると思うのですが、いかがでしょう?

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[Web] mixi の利用規約改定にみる企業法務の残念なところ

 最初に。

 自分で書いていてもややこしくなったので、この記事ではサイトとしては mixi とローマ字表記、企業としてはミクシィとカタカナ表記で統一しています。

 さて。

 先日、mixi の利用規約が4月1日に改訂を予定しているとアナウンスされ、それに対して様々な意見(もっとも、批判・反対意見がかなりの割合を占めていましたが)が出されました。

 利用者の反発を買った最大の点は改訂案の第18条です。複製、上映、公衆送信、展示、頒布、翻訳、改変等を行う権利をミクシィに許諾する、著作者人格権をミクシィに行使しないよう利用者に求めたことに対して、ユーザの多くは「それはないんじゃないか」と反発したわけです。

 この反発は、一般的な感覚で言えば、自然なものだと思います。

 第1に、書いたものに対して対価を得ているのであれば、対価の内容に財産権の移転が含まれていたとしても、まだ分かるのですが、mixi の場合、ユーザはなんらミクシィから対価を得ておらず、人によっては会費を払っている場合もあるにもかかわらず、さらに権利も譲りますというのは、まるで

「ただでもいいから貰って、なんならお金も払いますよ」

と言っているようなものです。少し古くなったギャグを使わせてもらえば、

どんだけ〜!

といった感じです。

 第2に、mixi が クローズドなSNSサービスであることも事態を不快なものにさせました。確かに今や mixi に書くことは多くの人の目に触れる可能性があるのは事実です。しかし、そうは言っても mixi はやはり会員制サービスであり、一般的な Web 上での書き込みとは区別されるものと考えられます。ましてや日記を「友人まで公開」としたり、コミュニティの参加に管理人の承諾が必要で、閲覧は参加者のみとしているような特定の人のみが読むことを想定したものも存在しています。これがミクシィの自由裁量で上映されたり、頒布されたり、展示されたり等の可能性があるとなると、

なんのための「友人まで公開か!」

という気持ちになるのも当然です。

 今回の規約改定の根底には、ミクシィの中で

「ユーザに利用してもらっている」

のではなく、

「ユーザに利用させてあげている」

との思考がどこかにあったからなのだろうと考えています。

 「お客様は神様です」との姿勢は、往々にして客は荒神すなわち「触らぬ神に祟りなし」的な対応になりがちなので、個人的には同意しませんが、「売ってやってるのではなく、買ってもらっている」気持ちを忘れてはいけないと思います(自戒の念も込めて)。

 もっとも、一般的には「規約を変更しました。効力は即日発効します」的な対処をするサイトが多い中、一定の告知期間を設け、そこで出た意見をフィードバックする姿勢は、ミクシィがユーザとの関係を健全に保とうとしていることの現れと好意的に受け止めています。確かに、「ブログで同様の問題があったのを知らなかったの?」と突っ込みたい気持ちや、新たに出された言い訳があまりにも苦しすぎるのでは? と言いたい気持ちになるのも正直なところです。「アセス数が多い日記等の情報については、データを複製して複数のサーバーに格納すること」を同意してほしかったって、今まで1台のサーバーでアクセス負荷をさばいてきたの? マジで? ありえない! もしそれが本当ならそのプログラムを書いた人やサーバ構築をした人は天才過ぎると思うわけで……。

 ともあれ、この件については、ミクシィから規約改定案を修正するとのアナウンスが出たこともあり、早晩沈静化することになるのだろうと考えています。

 長い前置きをようやく終えて、ここからが本題。

 今回の件は、現在企業法務が抱えている弱点を図らずも露呈してしまった典型的な例だと見ています。

 日常生活を行う中で、契約行為は頻繁に行っているものの、契約書あるいはそれに類するものに触れることは決して多くありません。アパートの賃貸契約の際に初めて手にしたという人も多いのではないでしょうか。

 職場の中でも、契約書とは無縁という人も、決して少なくないと思います。企業風土によっても異なるのですが、営業職や管理職以外では直接部門、間接部も問わず、契約書に関わることなく仕事をしている人も多いかと思います。

 中小レベルの企業では、営業担当者がお互いに「相手が契約書作ってくれないかな」とかまを掛け合ってみたり(リスク的には高いのですが)、あわてて本屋に駆け込み契約書ひな型集のような本を買ってきて、当事者の名前、案件名、金額だけを書き換えて作るということも日常的に行われているのではないかと想像します(僕自身も経験したことですが)。

 ある程度以上に組織が多くなり、取引が増え、それに伴い契約上のリスクが高まったところで、法律の知識が豊富な法務担当を採用し、法務部を設置し……というのが自然な流れでしょう。

 さて、法務の仕事は、何はさておき法律の知識を使って自社のリスクを最小限に食い止めることです。法務担当は本質的に

「チャンスを見つけてくる」

のではなく、

「危険を見つけてくる」

傾向になりがちで、嫌みな言い方をすれば、「相手方を信用しない」ことを出発点にして物事を考えます(むろん、言うまでもなく、相手方の言うことを鵜呑みにするような法務担当者は失格だと思いますけれど)。

 企業対企業の場合は、これで充分に法務としての職責を果たせました。なぜなら、企業対企業では、お互い「利益を追求する」という同一の土俵で交渉が行われたからです。従って、「この部分の利益をあげるかわりに、こっちの部分はくださいよ」的な落としどころを見つけることは、営業等の交渉担当の腕の見せ所だったわけです。法務としては、妥協した部分についてどのような法的リスクが発生するかを組織として把握できる状態にさえしていれば責任は果たせたと言えます(個人的な述懐をすれば、交渉の相手方よりも、むしろ自社の法務担当に殺意を覚えたこともしばしばだったり)。

 また、企業対消費者としての個人の関係においても、Webサービスで言えば、ニュースサイト、ポータルサイト、ショッピングサイトなど既存の(Web1.0的な)サイトでは、有料無料を問わず提供者と受益者が明確に分かれ、上記と同様の理屈で仕事ができたわけです。

 ところが、コミュニティサイトなどユーザ参加型のサービスサイトの場合、運営者はプラットフォームを提供し、利用者はコンテンツを提供しており、どちらも「提供者」としての立場になります。ここで問題になってくるのが、利用者は必ずしも利益を求めているのではなく、利便性を求めていることが多い点です。

 利益と利便は混同されがちですが、利益が経済的基準(下世話な言い方をすれば「お金」)によって判断されるのに対して、利便は好き嫌い、快・不快など感情的な基準によって判断される点が決定的に異なります。

 mixi の利用規約変更案第18条は、ミクシィとしては、プラットフォームを提供する(利益を提供する)対価として、利用者の著作権上の財産権を求めただけというのが正直なところでしょう。ところが、ユーザとしては多くの友人が参加しているから自分も利用しているのであって、mixi を利用することによって利益を得ようとしているわけではないという人が大多数だと考えられます(中には、mixi を使ってお小遣い●円稼ごうなんて人もいるのかもしれませんが)。

 そのため、ミクシィ側が経済的な損得勘定で妥協を迫ったとしても、エモーショナルな基準で判断するユーザにとっては、「とてもじゃないが受け入れられない」という気持ちになるわけです。

 感情論で反対するというのは、ネガティブな印象を持たれがちですが、そもそも利益追求を行っていない場合、感性や信条、直感を信じて行動することは、理性的かつ人間的な行為です。

 先にも述べたとおり、現状の法務は相手はともすればこちらを出し抜こうとしているという前提で思考するよう訓練を受けています。ところが、ユーザ参加型のサイトにおいて目の前にいるのは、こちらを信頼し、場合によっては自分たちも一緒になってサイト運営に協力することにやぶさかではない人たちです。そのような人たちに、「あなたたちのことを信用していませんから」という姿勢で挑むのは、手袋を投げつけるようなものです。

 端的に言えば、今の法務は現場を知らなさすぎると言えます。これまでなら、現場を知らないことは、マイナスに働くことは少なく、むしろ相手の実情を知ることによって情に流されることがないぶんプラスだったのですが、Web2.0 あるいは来るべき Web3.0のサービスを展開するのであれば、自分たちの顧客(ユーザ)がどのようなことを好み、どのようなことを不快に感じ、そして何に対して怒りを感じるのかといった顧客の文化を理解することが法務担当にも求められることになると考えます。

 上記のような法務担当が登場するまでの間、個人的には、ユーザ参加型のサービスを考える場合、利用規約は経営者自らビジネスを展開する上で最低限譲れない点を慎重に検討した結果のみを記述し、後は実際にユーザと接するサポート部隊にQ&A集を作らせるスタイルが望ましいと考えています。

 プログラム・コーディングの世界では「設定よりも規約」というのが主流になりつつありますが、ことサービス運営を行う上では、「明文化された規約よりもコモンロー」がベターだと思うのですが、いかがでしょう?

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[Web] newsing における著作権のクリア方法:ユーザの行為

 引き続き、newsing について。

 newsing のようなニュースまとめサイトを作ろうとした場合、大きなリスクが発生する要因として著作権侵害の問題があります。この点、newsing が具体的にどのようになリスクを抱えているかを知ることは、これから同様のコンセプトのサイト構築を考えている方にとって参考になるのではないかと思います。

●ユーザの行為によって発生するリスク

 newsing は、ユーザ自身がニュースを投稿することから始まります。正確にはユーザはすでにWeb上で公開されている記事のURLを投稿するだけです。この行為そのものは、基本的には著作権上の問題は発生しないと考えられます。なぜならURLの記述については、ネット上での位置情報に過ぎず、住所や建物名と同じく標識と判断され、創作性があるとは言えないと考えられます。

 ただし、対象となるコンテンツの閲覧が会員制など、何らかのアクセス制限を設けているケースで、セキュリティ対策が充分でなく、直接リンクをたどった場合に閲覧できてしまった場合は、著作権法上の問題とは別に、不正アクセス禁止法上の問題が発生する可能性があります。確かにこの場合、セキュリティに不備があった過失があるわけですが、しかし、どのような過失があったにせよ、その過失を突いて侵害行為を行っていいことにはなりません。たとえて言うならば、鍵がかかっていない住居に侵入した場合に、鍵がかかっていなかったから罪にならないということにはならないわけです。この意味で、昔話題になったサーバーノーガード戦法は依然として有効なわけです。むろん、サーバーノーガード戦法によって不正アクセスされ、第三者の権利が侵害された場合の責任を免れるものではありませんが……。

 脱線してしまいました。話を元へ。

 記事を投稿する際に記事のタイトルを記述する必要があるわけですが、この点のリスクについて。

 原則論としてニュースの見出しは「事実の伝達に過ぎない雑報及び時事の報道」に該当して著作物には当たらないと考えられています。ただし、創作性を肯定しうる余地もある(すなわち、著作物に該当する場合もある)というのが裁判所の立場です(ニュースティッカー訴訟)。加えて、newsing では、上記のような意味でのニュースだけとは限りません。ブログの記事タイトルのように、創作性が認められるようなケースもあり得ます。このような見出しを「そのまま掲載する」場合は複製権の侵害を主張されるリスクがあるでしょうし、「改変して掲載する」場合は同一性保持権の侵害を主張されるリスクがあるでしょう。

 これに対する弁論として、一般的に書名(サイト名)や章タイトル(記事ごとのタイトル)は、紹介を目的とする場合には著作権を侵害しないと論じることは可能です。しかしながら、先に挙げたニュースティッカー訴訟の控訴審判決において、知的財産高等裁判所は

「民法の不法行為が成立するためには必ずしも著作権など法律に定められた厳密な意味での権利が侵害された場合に限らず、法的保護に値する利益が違法に侵害がされた場合であれば不法行為が成立するもの」

とし、

「見出しのみでも有料での取引対象とされるなど独立した価値を有するものとして扱われている実情があることなどに照らせば、見出しは、法的保護に値する利益となり得るもの」

と判断されていることから必ずしもリスクを回避しているとは言えないように思えます。

 ユーザが行う第3のアクションとして、取り上げようとしているニュースの要約・意見を記述する部分があります。

 この部分について、運営主体である株式会社マイネット・ジャパンとしては、あくまでも記事の要約としてユーザ自身の著作によるものを想定しているように見受けられます。

 しかしながら、実際には元記事の一部をコピー&ペースとしたものが見受けられます。

 この部分について、newsing 本体はシステム的に最低限の文字数を入力するよう求めており(2008年2月末時点では最低20文字以上)、ユーザとしては必ず入力を求められることになります。

 そこで問題は、仮に元記事の一部をそのまま転載した場合に「引用」として認められるかどうかということになります。

 一般的に「引用」とは、引用された文章が従であり、主として引用者本人の創作物が要求されます。その意味では、「要約・意見」の部分に元記事そのものを転載している場合、著作権を侵害していると訴えられるリスクが残ることになると言わざるを得ないわけです。

 以上の通り、現状の newsing の記事投稿において、一見すると URL のみの投稿であるから著作権上の紛争リスクは発生しないかのように見えますが、詳細を検討すると、上記の通り、完全に著作権侵害として訴訟を提起されるリスクをクリアしているとは言えないのではないかと考えられます。

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[Web] newsing について

● newsing とは

 URL:http://newsing.jp/

 

株式会社マイネット・ジャパンが運営する「ユーザー参加型ニュースサイト」
 このサービスにおける「ニュース」とは、運営主体が取材ないし記事を購入した情報ではなく、ユーザがインターネット上に掲載されている各種記事のURLを投稿したものとなっているのが最大の特徴。この投稿されたニュースに対してコメントや○×の評価をつける機能を備えている。記事の閲覧は会員登録なしでも行えるが、記事の投稿、コメントの記述、○×評価付けは、会員でないと行えない。
 投稿された記事は、閲覧数、コメント数(○×評価数)、コメントに対する評価数によってランキングされる。○×評価の基準が、投稿行為に対する是非なのか、記事の内容に対する賛成・反対なのかあえて明確にされていないことからもランキングは、「注目度」を基準にしている点も特徴。
 サイト自体の収入は広告収入となっており、一般的なアフィリエイトとPRnewsingと呼ばれる広告記事掲載から成り立っている。ただし、マイネット・ジャパンとしては、newsing をシステムのβバージョンすなわち、フラグシップサイトとして位置づけ、システムそのものの販売やコンテンツも含めたOEM事業を行っている(2008年3月現在「イントラnewsing」「newsing2b」の2サービス)。
 この種のニュースサイトで問題になりがちな著作権問題についても、現状を見る限り、掲載されている文章自体は記事が掲載されている元サイトへの誘導を行うための引用の範囲内と主張できそうなこと、トップページではユーザが記述した「要約・意見」を優先して表示していることなど、慎重に作られてる。ただし、元記事に掲載されている画像がどうやら newsing 本体のサーバに複製されているなど、見える範囲ではグレーな部分があり、newsing の利用が拡大し、一般的な認知が進むのと比例して、訴訟リスクも高まるのではないかと思われる。

● newsing についての個人的な感想
 ビジネスとして考えた場合、newsing は技術系企業として実に正道を歩んでいるように見えます。

「ニュースサイトを立ち上げよう!」→自前で記事を書く or 新聞社から記事を購入する or ニュース系サイトをクロールする

という発想をせずに、

利用者自身にニュースを投稿させる

としたこと、同時に「Oh My News」 のようにユーザに「記事を書かせる」のではなく、サイトの記事URLを投稿させるとしたことは、参加の垣根を低くしつつ(量の確保)、一定レベルの文章力、取材力を維持し(質の確保)、かつコンテンツ制作費を最小限にとどめる(コストの低減)ことに成功している数少ない例だと思います。
 加えて、先にも述べたように、マイネット・ジャパン本体にとっては、「記事投稿→評価→ランキング」といった一連のシステムを無償でベータテストしてくれるユーザを獲得し、テストを重ねた上で成果を反映した製品システムの販売につなげる戦略は、技術主体の会社であれば、誰もが一度は夢見ることではないでしょうか(2008年3月現在、みずほ情報総研株式会社ファクタ出版株式会社が導入)。

 しかしながら一方で、ユーザ視点として、newsing は魅力的なサービスと言えるのか、言い換えれば、newsing 単独として考えた場合にユーザとしての利用価値=商業価値があるのかについて疑問に感じる点があります。
 コンセプトである「ユーザー参加型ニュースサイト」は、一見すると非の打ち所がないように思えます。しかし、ここで言う「ユーザ」は、すでに一定のバイアスがかかっていると言わざるを得ません。すなわち、少なくとも2008年3月時点では、このユーザの多くは、「コンピュータリテラシーと同時にネットワークリテラシーを有している人」と置き換えても良く、newsing に取り上げられるニュースは、この属性の人が興味を持ちそうな情報に偏重しがちな傾向があることは否めません。具体的には、PC、インターネットを主軸として、その周辺分野のニュースが投稿され、かつ、評価される(すなわちランキングの上位にくる)ことになりがちです。たとえば、2008年2月19日の Daily newsing のトップは

「動画 なだぎ武R-1ぐらんぷり優勝ネタ」

とであり、以下、
「同級生少女(16)の全裸画像を掲示板に張り付け→高1男子ら4人逮捕。画像が出回り、少女は自主退学」
「オトコのための混浴温泉マナー」
「4月1日以降のモバイルSuica、年会費が必要に」
「新垣結衣の身長が伸〜び過ぎて騒ぎになっている 」

が上位5位となっています(http://newsing.jp/daily/20080219)。すなわち、社会・芸能、ITビジネスに属するニュースが newsing では、トップ記事となる傾向にあるわけで、冷たい言い方をすればゴシップネタになりがちなのが、newsing というサイトの現状です。ちなみに、2月19日は、例のイージス艦衝突事件があった日です。
 つまり、情報収集先のサイトとして、唐沢俊一的なこっそり埋もれた三面記事トリビアを探すにはもってこいと言えますが、「日本の”今”はここにあります」と言われると、表面的には首をかしげざるを得ません。揶揄して言えば、マーケティング的であったり、民度を計るという意味では「日本の”今”はここ」なのかもしれませんが……。
 皮肉はともかくとして、ニュースサイトとしての newsing の今の弱点は、2008年2月19日の現象に現れているように「他のメディアで充分に観たものは投稿されないし、評価もされない」という点にあるのではないかと考えています。
 この点は、「ニュースサイト」として考えた場合、致命的な限界要因になるのではないかと思います。つまり、あくまでも「newsing」は二番手以降。ユーザ個人にとっての一番は別のサイト(ないしニュースソース)という状態から脱することが難しいのではないかと危惧します。
 むろん、永遠の2番手というのも戦略的にはありです。少なくとも、マイネット・ジャパン本体にとって、newsing はあくまでも技術的な実験場ということであれば、むしろ2番手であり続けることこそ意義のあることだと思います。松下 vs. ソニーの技術競争のように常に2番手に位置し続けることこそ最終的な勝利の道であることは確かです。さらに言えば、マイネット・ジャパンにとっては、ニュースサイト(=メディア)であることが本分なのではなく、あくまでも情報を伝えるプラットフォーム作りがメインであるというのであれば、部外者としては、もはや何も言うことはありません。
 しかし、newsing をベータテストの場以上の存在にすることを考える場合、現状の内部的に閉じたランキングシステムに加えて外部要因を取り込む仕組みを考える必要があるのではないかと思います。

● 個人的に newsing に求めること
 乱暴であることを覚悟の上で言えば、newsing は、はてなブックマークにニュース性という制限を設けたもの以上でも以下でもないと思います。
 であるとするならば、私的なスクラップブックとしての機能を設けることを検討していただきたいという要望があります。つまり、自分がピックアップした、しないに関わらず関心を持ったニュースについてマイページに格納でき(格納という点ではコメントをつけるというアクションがあってもいいのかもしれませんが)、かつ検索をマイページ限定で行える機能を設けていただければと思います。
 人間は常に今と将来しか見ていないものではなく、過去を振り返ることによって、将来の動向を見定めたいというタイプの人間もいるはずです。
 要望その2は、上でも書きましたが、ランキングについて、「newsing 利用者」に閉じるのではなく、より広い範囲で注目を集めているニュースが上位に表示されるような仕組みを設けて欲しいということです。
 第1の要望によって、誰のためでもなく自分のために記事をピックアップするユーザが増えることになり、結果としてユーザカスタマイズされた Web サービス(巷間言われている Web3.0的な)サービスへの道筋になるのではないかと思います。
 また、第2の要望によって、メディアとしての、つまりは広告媒体としてのニーズも今以上に高まるのではないかと思うのですが、いかがでしょうか?

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