【著作権】小室哲哉逮捕に見る著作権法の気味の悪さ 続き
現行の著作権法を乱暴にまとめてしまえば、
- 本来、著作物を作りだした自然人(本来のクリエイター)から、どのようにして権利を切り離すか
- 著作物を物質化した物権(モノ)を入手した自然人(最終消費者) の権利をどのようにして制限するか
これを規定している法律だと言えるのではないかと個人的には考えています。
たとえば、あなたが会社のキャンペーンのためにポスターを描いたとします。これだって著作物です。 あなただから描けたポスターでしょう。本来の著作者は、あなたのはずです。しかし、著作権法は、このポスターの著作者は「会社」 と規定します。従って、あなたが別の会社に転職した際、あなたが描いたポスターを再び活用することは著作権法違反となります。反面、 会社はあなたの描いたポスターを絵はがきにしても構わないし、 ポスターの中に描かれているキャラクターだけを他の目的に使用することだって許されます。
この理屈としては、あなたがこのポスターを描いているとき、すでに会社は給料としてあなたに対価を払っている。もしかすると、 あなたはポスターを描けなかったかもしれない。そのリスクも含めて、給料を払ってきたのだから、 ポスターの著作権は自然人であるあなたではなく、法人である「会社」に帰属することに、不合理な点はないと主張します。
一方、あなたが CD アルバムを買ってきた。10曲中、2曲が特にお気に入りで、自宅にいるときだけではなく、iPod に2曲だけコピーして外出先でも聴きたいと思った。しかし、厳密に著作権法に則って言えば、複製権の侵害であり、 いちいち個人を訴えるのは手間だから、大本の iPod を製造しているメーカーに「訴えないから、ひとまず金を出せ」 と主張できる権利があるはずとの意見を述べてみる。この場合、特定のアーティストへの支払ではなく、 著作権者の集合という漠然としたところがお金をもらうわけで、そこから先、 実際のアーティストに支払われることは保証の限りではないという点がポイントです。
単純に言えば、
本来の著作者、最終消費者、どちらかを保護している訳ではなく、 中間にいるなんだかよく分からない人
これを保護しているのが著作権法の実情だと僕は見ています。
たとえば、必ずしもメジャーではないアーティストが、ようやくテレビに出演できた。 アーティスト本人がテレビに出演できたことを自慢したいと思っても別におかしいとは思いません。 個人的にはむしろ自然な営業活動ではないかと思います。ところが、自分自身が出演している場面を、たとえば YouTube なんかに掲載すると、著作権法的にはアウトです。なぜなら、映像の著作権者は、実際に出演したアーティストではなく、テレビ局なのだから。 もちろん、テレビ局の理屈もよく分かります。出演した分の出演料(対価)は払ったのだから、そこで著作権は我々テレビ局のものだ。 ぐうの音も出ません。
でも、これおかしな話じゃないですか?
- 本来のクリエイターは、自分が創ったものを再利用できない
- 著作物を入手した消費者も、自分が手に入れたものを再利用できない
じゃあ、再利用できる人は、誰なんでしょう? そして、その人は本当に著作物を必要としている人なんでしょうか?
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